最高裁判所第一小法廷 昭和36(オ)925 判決
主 文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人らの負担とする。
理 由
上告代理人小笠原六郎の上告理由について。
原審が、被上告人(控訴人)の上告人(被控訴人)らに対する事務管理による有
益費の償還請求を是認した趣旨を要約すると、上告人らはD保護協力会の運営資金
とする目的で被上告人の斡旋によつて訴外Eから金五〇万円を借用したが、弁済期
(昭和二八年八月二六日)を過ぎてもその弁済をする見込がなかつたところ、被上
告人は右貸借斡旋の責任を感じて右債務の立替払をしようと考え、昭和二九年一月
二七日同人が勤務していた水産庁F鮭鱒孵化場G支場H事業所の鮭鱒売却代金の内
金三〇万円を国庫に納入することなく、恣に上告人らの前記借用金の一部弁済とし
て、該金員が国庫に所属するものであることを知らない債権者Eに支払つた、しか
して、この弁済は債務者たる上告人らの意思に反するものでないことが推知できる
ので、被上告人の右立替払は弁済の効力を有する、したがつて、被上告人は上告人
らに対し義務なくして上告人らのために金三〇万円を弁済し、その弁済が上告人ら
の意思に反するものでない以上、被上告人は上告人らのためにする事務管理者とし
て、その出捐による有益費の償還を上告人らに対し請求できるものというべきであ
るというにある。
原審の右判示に対し、論旨は、事務管理による求償権の行使ができるのは、事務
管理者が本人のために自己の負担において正当に有益費用を出捐した場合に限り、
本件におけるように、被上告人が国のために保管中の魚代金から横領行為によつて
支払の目的を遂げたような場合には、被上告人に求償権の生ずるいわれがないと主
張する。
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しかし、本件におけるように、他人の金銭を費消横領して有益費の支出に充てた
としても、これを受け取る相手方は、特別の事情がない限り、その金銭に対する完
全なる所有権を取得するものであるから、有益費支出者自身の金銭を支払つた場合
と別異に解する理由はない。なお、所論は、衡平の観念を云為するが、原判決認定
の事実関係の下で所論のごとくいえば、上告人らの利益において被上告人は二重の
損失を受けることになり、却つて衡平を失する。論旨は、すべて独自の見解であつ
て、採用できない。
よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、
主文のとおり判決する。
最高裁判所第一小法廷
裁判長裁判官 斎 藤 朔 郎
裁判官 入 江 俊 郎
裁判官 長 部 謹 吾
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